距離が近すぎた派手髪美容師の話
しらすの絡まれシリーズ
私が18か19の時、大きな商店街を歩いていたときのこと。
突如、赤い派手髪をツンツンに立てたチャラいお兄さんに、声をかけられた。
第一印象は、「今からバンドのリハ行きますみたいな男」である。
なんだ、ナンパか?
残念だったな、私はこれから家に帰って推しのアニメを見なくては。
陰キャ芋女にこの商店街はまぶしすぎるのだ。
早々に帰してもらいたい。
足を止めず、聞こえないふりをする私。
「安くで施術するんで、うちのカットモデルになってくれません?」
なんだと??
足が止まる。
こいつ美容師だったのか。
そして、カットモデル。
なんて甘美な響きだろう。
あ、あーー!
そういえば髪切りたいって思ってたかも???
ちょうど今から美容院行こうとしてた?みたいな?
そっかぁ!モデルかー!しゃーないな!!
チョロい。
本当にチョロい女である。
モデルという言葉に全て持っていかれ、私は快く承諾した。
そして商店街のにぎやかな空気の中、私は赤いツンツンヘアーの男についていった。
気分はウッキウキである。
しかし、すぐに違和感がやってきた。
距離が近い。
ただの美容室に向かっているはずなのに、妙に距離が近いのだ。
会話のテンションも、距離感も、初対面のそれではない。
その上スキンシップも多い。
多いというか、過剰。
腕や頭をサスサスしてくる。
手を繋いでくる。
んん、初対面の美容師さんって、こんなに触れてくる職業だったっけ??
まだ私シャンプー台にも座っていないんだが??
お兄さんは軽い調子で私に話しかけ続ける。
「しらすさんは年上の彼氏とか大丈夫っすか?俺25歳なんですけど〜笑」
…待て。こいつは本当に美容師なのか?
だんだん不安になってきた。
初めの場所からもう15分は歩いている。
しかしまだサロンに辿り着かない。
私は最悪な可能性を頭に浮かべる。
まさか、今私は騙されているのか?
このままホテルかどっかに連れて行かれて、
「あっれれ〜?美容院だと思ったら大人のテーマパークについちゃった⭐︎せっかくだし遊んでいきます??」
とか言われるのか?
くそ、騙された!!
これは絶対サロンという名の、大人のテーマパーク行きに違いない!
私はまだ未成年だぞ!!訴えてやる!!
「着きましたよ」
ふぁっ!?
『ヘアーサロン✕✕』(仮名)
……美容院だ。
ちゃんとついてしまった。
いらっしゃいませ~という他のスタッフの挨拶も聞こえてきた。
どうやら本物のようだ。
席に座らされる。
シャンプーされる。
ちゃんと髪を切られる。
その場の雰囲気に乗せられ、人生初のヘアカラーもされた。
ブラウンカラーがとても可愛い。
さーせんお兄さん。
エセ美容師とか疑って、ほんとさーせんっした。
そうして施術が終わり、帰りにお兄さんはスタンプカードを渡してきた。
美容室あるあるの、次回予約につなげるやつだ。
変な人だったけど、まぁまたこの辺りに来ることがあれば行ってもいいかも…
そう思いながら、スタンプカードの裏を見て私は固まった。
裏に手書きで意味深な数字とアルファベットが書かれてあったのだ。
まさか。
いや、まさかな。
しかし試さずにはいられない。
恐る恐るLINEで検索したら、奴のプライベートアカウントが出てきた。
彼の行動に思わずため息がでる。
そして、私はとある重大なことに気づいてしまった。
…私、写真1枚も撮られてなくね???
モデルは?
え、モデルは???
てかちゃんと料金割り引いてもらえてた??
くそ!!!
やっぱナンパだし騙されてるじゃねーか!!
その日から、私はその商店街に一度も訪れていない。



カットモデルという甘美な響きを使いこなす美容師という仕事、羨ましすぎるっ‼️
麻酔科医だと「へぃ、そこの彼女。気持ちいいクスリでぶっ飛びたくない?」と、即職務質問されてしまうようなセリフしか吐けないのが悔しい……
初対面で手を繋いでくるなんて😱💦
そんな人もいるんですね!
怪しいテーマパークに連れてかれなかてよかったです🤣