30歳から歯が抜ける世界
乳歯の定年を延長したら社会が荒れた。
物申したい事がある。
読者に対してではありません。
歯に対してです。
ふと思ったのです。
歯という奴らは、一歳になる少し前から「待たせたな」と言わんばかりにニョキニョキ現れる。
そして、ようやく一人前に働き始めたと思ったら、6歳ごろから順番に抜けていく。
…ちょっと早くないですかね。
最初の歯なんて、勤務年数はわずか6年ほどである。
一方、そのあとに生えてくる永久歯は、名前のとおり永久に働くことを求められる。
人によっては、そこから80年近い勤務になるだろう。
労働環境の差がすごい。
そもそも歯は、健康に大きく関わる重大なパーツだ。
毎日磨かなければならないし、定期的に検診にも行かなければならない。
健康を維持するのも大変です。
もう少し切り替わりポイントを長くしてもいいのではありませんか。
たとえば、30歳くらいまで乳歯に頑張ってもらうとか。
30年間働いたのなら、乳歯も胸を張って引退できると思いませんか。
「30年ありがとう」って言いながら、抜けた歯を屋根にちゃんと投げてもいい。
なんなら粉砕し、その粉で新たなアクセサリーを作ってもいい。
乳歯の形見。
…ちょっと怖いからやっぱなしで。
そこで私は、30歳から歯が生え替わる世界を想像してみた。
30代。
仕事に育児、結婚、婚活。
人生のさまざまなイベントが、一斉に押し寄せてくる年代である。
そんな時期に、歯まで順番に抜け始める。
愛する人にプロポーズする男性。
夜景の見えるレストランで指輪を差し出し、緊張しながら言う。
「僕と、結婚してください」
前歯がない。
前歯から4つ離れたとこの歯もない。
決まらねぇ。
どう考えても決まらねぇ。
隙間から空気が漏れて、滑舌も若干悪い。
「ひぇっほんひへぇふははい」
相手がホロリと涙を流したとしても、感動なのか、笑いをこらえているのか判断が難しくなるではないか。
仕事でも困る。
上司が部下を会議室に呼び出し、厳しい表情で言う。
「君には、もっと責任感を持ってもらわないと困る」
その瞬間。
ポロッ。
机の上に転がる奥歯。
責任感の話が全部飛ぶ。
部下も反省どころではない。
「あの、歯……落ちましたけど」
上司は無言で奥歯を拾い、羞恥心のあまり勢いよく窓から天へ投げる。
下の歯だったのだろうか。
その場にいる全員が、そこだけは気になってしまう。
きっとこの世界では、大人用のカモフラージュ入れ歯が販売されるだろう。
「明日は大事なプレゼン! 抜けた歯を自然に隠す、貼るだけ簡単・仮前歯」
そんな広告が、電車の中に並ぶ。
歯医者はきっと大繁盛だ。
…なんかこんな話前もした気がするな。
気のせいかな。
あと、会社には「生え替わり休暇」が導入されるかもしれない。
前歯が抜けた人はリモート勤務。
奥歯が抜けた人には、やわらかい社食支給とか。
めっちゃめんどくさい社会になっとる。
そう考えると、歯の生え替わりが小学生の時期なのは、かなり合理的なのかもしれない。
歯が抜けても、笑って記念写真を撮れるし。
話すと空気が漏れてもかわいいものだし。
抜けた歯を見せびらかしても、誰も何も思わない。
歯よ。
生え替わりが早すぎるなどと言って、申し訳なかった。
あなたたちは、人生で最も歯抜けが許される時期を、きちんと見極めていたのですね。
やっぱり歯抜けは、小学生まででいい。
永久歯のみなさんには引き続き、定年のない職場で頑張っていただきたいと思います。
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前歯のない人からのプロポーズはキツいです🤣そして『喜んで』とニッコリしても前歯のない自分もイヤです🤣しらすさんワールド面白すぎ🌷
抜け変わる時期によって、こんなにもコントの様な話に🤣
70歳ぐらいで抜け変わればなんて思ってしまった🤣