マウンテンに置いてきた初恋
小学生から心に居座り続けた彼と、8年ぶりに再会した話
皆様は忘れられない片想いをしたことがあるでしょうか。
私ですか?
えぇもちろんありますとも。
本日は、私しらすの最大の片想いストーリー。
同時に、最大の失恋でもあったストーリーについて語らせていただきましょう。
始まりは、小学5年生の頃。
私は、とある男子に恋をした。
初恋である。
家は比較的近く、帰り道もほとんど一緒。
顔が良い。
話していて楽しい。
そして、顔が良い。
大事なことなので、もう一度言いました。
中学校も同じだった彼を、私は一途に想い続けた。
片想い歴約5年。
今までの人生で1番長き片想い。
そんな私の恋に、ある日突然の終わりがやってきました。
舞台は夢と魔法の国・東京ディズニーランド。
そこで彼が、ある女子に告白をする。
そんな情報を入手したのである。
お相手は、スクールカースト上位に君臨するパリピJC。
明るい。
友達が多い。
ギャル。
対する私は、カースト最下層の女。
根暗。
ぼっち。
芋。
おわた。
もうこれは終わりましたわ。
夢どころか現実を見せてきましたわ、ディズニーランド。
私はすべてを諦め、友とビッグサンダー・マウンテンに乗った。
ゴオォオオオオオッ!!!!!
猛スピードで駆け抜ける列車の中、涙流しながら叫んだのを覚えている。
「うわああああああ!」
「くそぉぁぁぁ!!!!!」
周囲の人には、アトラクションを全力で楽しむ少女の声に聞こえただろう。
いいえ。
これは、ひとりの陰キャが上げた失恋の絶叫です。
私の初恋は、あの日ビッグサンダー・マウンテンに置いてきた。
けれど心のどこかで、ほんの少しだけ期待していたのだ。
いつの日か。
お互いフリーで。
偶然再会するようなことがあれば。
そのときは、もしかすると。
ワンチャン、ワンチャンあるかもしれない。
しかし、このわずかな期待を捨てきれなかったことが、後々仇となった。
それから約8年後。
私は立派な大人のレディとなった。
芋感も少しは抜け、身なりも少々マシになった。
おかげで私はとある店に就職することができ、それなりに楽しくやらせてもらっていた。
ある日の事。
店に1人の男が入ってきた。
接客しながらその男性の顔を見て、妙な違和感を覚えた。
知っている。
この顔を、私は知っている。
「あの…お名前を聞いても?」
恐る恐る尋ねると、彼もこちらの顔をじっと見た。
「やっぱ地元近くっすよね、俺ら」
運命の再会であった。
あの頃よりもだいぶ背が高くなり、雰囲気も変わっていたが、面影は残っている。
あの頃、5年以上も想い続けた彼。
ビッグサンダー・マウンテンに置き去りにしたはずの初恋。
それが今、目の前に立っている。
しかも彼も、私を覚えていた。
嬉しかった。
とても嬉しかった。
しかし同時に、絶望でもあった。
なぜなら、彼がこの店に来る理由は、ひとつしかなかったからだ。
聞きたくない。
絶対に聞きたくない。
けれど、店員として聞かなくてはならない。
私は覚悟を決め、彼に尋ねた。
「お探しは婚約指輪ですか?
結婚指輪ですか?」
そう。
ここはブライダルジュエリー店。
彼は、別の女性に贈る指輪を買いに来たのである。
彼は迷うことなく答えた。
「婚約指輪です」
ゴオオオオオオオッ!!!!!
私の心が、ビッグサンダー・マウンテンよりも速く急降下した。
さよなら、我が初恋。
さよなら、あの頃残したわずかな期待。
しかし、今は勤務中。
感傷に浸っている暇はない。
その後私は、約2時間をかけ指輪の説明をした。
ダイヤモンドの品質についても話した。
彼女にどのデザインが似合いそうか、一緒に考えた。
プロである。
初恋相手の婚約指輪選びを手伝うという、誰が用意したのか分からない拷問に、私は最後まで耐え抜いた。
偉い。
大人しらす、偉すぎる。
この事がきっかけで、あの頃死ぬほど欲しかった彼の連絡先も手に入れた。
今じゃない。
欲しかったのは、今じゃない。
複雑にも程がある。
それから2ヶ月後。
完成した婚約指輪を彼は受け取りに来た。
好きだったあの笑顔で「ありがとう」と言い店を出ていった。
引き止めることなど、できなかった。
こうして、小学5年生から約13年。
心の片隅に居座り続けた初恋は、正式に幕を閉じた。
後日。
彼は婚約者を連れ、ニコニコしながら結婚指輪も買いに来た。
ふざけるな!!
終われよ!!!
お前は容赦ってもんを知らねーのか!
綺麗に幕を閉じさせろよ!
婚約指輪だけでは飽き足らず、婚約者本人まで連れてくるとは。
とことん血も涙もねぇ男である。
私は無理矢理接客用の笑顔を浮かべながら、彼の婚約者を見た。
派手なメイク。
きらびやかなネイル。
そして、金髪。
やっぱりギャルじゃねーか。
あの日、ディズニーランドで敗北を悟った私の勘は、どうやら正しかったらしい。
もはや清々しいほどに彼の好みは一貫していた。
彼女は、とても可愛らしくいい人だった。
なるほど。
これは勝てんわ。
こうして私の初恋は、婚約指輪に続いて結婚指輪まできっちり販売したことで、今度こそ完全に終了した。
お二人とも、どうかお幸せに。
指輪のお買い上げ、誠に有難うございました。



その数年後……………
すみませーん、指輪のサイズって直したりできますか?
そうそう、幸せ太りっていうんかな?
なんかちょっと入らなくなっちゃって笑
そのまた数年後……
スイートテンなんだよね、なんかダイヤがいいみたい
オススメとかないかな?
ぬおーん!!!😭😭😭
朝から切ない記事を読んでしまいました。
しっかし、緩急あって今回も傑作ですね👏
「やっぱり、ギャルじゃねーか」
1番笑いました🤣