8,000円で手に入れたブルベ冬が消えた日
オシャレって難しいね。
パーソナルカラーって知っていますか。
イエベとか、ブルベとか、女子たちがコスメ売り場でわーわー言っている、あれです。
「このリップ、ブルベ向けらしいよ」
「えー、私イエベだから無理かも」
そんな会話を横で聞きながら、昔の私は思っていた。
人間の肌を4つに分けるなんて、ずいぶん大ざっぱな話だな、と。
そう思っていた。
診断を受けるまでは。
(パーソナルカラーってなんぞや?という人の為に一応図解をご用意しました。
とりあえず血液型みたいな感じで、顔面に春夏秋冬があるんだな
ってことだけ頭に入れていただければ楽しく読めます。)
すべての始まりは、友人と出かけたパーソナルカラー診断だった。
診断士さんが、私の顔の下に赤や青、黄色、緑と、さまざまな色の布を当てていく。
「こちらの色だと、お顔がパッと明るくなりますね」
なるほど。
「こちらだと、少し影が出ますね」
なるほど。
全部なるほどと言っていた。
正直、本人にはあまり分からない。
何も分かっていない人間ほど、診断中によくうなずく。
しばらくして、診断士さんは自信たっぷりに言った。
「しらすさんは、ブルベ冬です!」
ブルベ冬。
強い。
名前からして強い。
聞けばブルベ冬は、菜々緒さんのような、黒や鮮やかな赤が似合う強きレディに多いらしい。
私は思った。
ついに来たか。
私の時代が。
さらに、ブルベ冬に当てはまる人は比較的少ないと聞いた。
少ない。希少価値。
つまり私は選ばれし者。
診断に行く前まで、
パーソナルカラー?馬鹿馬鹿しい!
なんて思っていたくせに、自分が希少価値の人間だと分かった瞬間調子に乗るのが私だ。
8,000円を払って、自分が特別な人間だという証明書を手に入れたような気分だった。
それから約1年後。
私は趣味で、ブライダル関係のスクールに通い始めた。
そんなスクールの授業で、先生が生徒たちのパーソナルカラーを診断してくれる機会があったのだ。
だがしかし。
私はすでに自分の答えを知っている。
ブルベ冬。
選ばれし冬。
今回は確認作業でしかない。
先生は私の顔の下に布を当てながら、真剣に考えている。
さあ、言ってください!
ブルベ冬と!
先生は明るい顔で言った。
「しらすさんは、イエベ春ですね!」
……。
……わっつ?
聞き間違いかと思った。
冬ではなく、春。
しかもブルベでもなく、イエベ。
北国にいたと思ったら、突然お花見に連れてこられた。
「先生、私、以前ブルベ冬と言われたことがあるんですが……」
一応、抗議した。
私のアイデンティティーに関わる問題である。
何より、あのとき払った8,000円を無駄にするわけにはいかない。
先生は目を丸くした。
「ええっ!? ブルベ冬!?」
「そのサロンの人、おかしいんじゃない?」
すごい言われようである。
さらば8,000円。
こうして私は、強き冬の女から、軽やかな春の女へと生まれ変わった。
さらに半年後。
私は懲りずに、別のパーソナルカラー診断を受けることにした。
なぜ人間は、一度迷子になると、さらに遠くへ進んでしまうのだろう。
でも私はどうしても真実が知りたかった。
私は冬の女なのか。
それとも春の女なのか。
私の季節は、いったいどこにあるのか。
さあ!
決着をつけようじゃないか!!
診断士さんは、私の顔をじっくり見た。
何枚もの布を当てた。
そして、静かに答えた。
「ブルベ夏です」
もういいよ!!!
スタンプラリーをしているわけじゃないのよ!!
冬、春、夏。
あとひとつで、日本の美しい四季が私の顔面に集結してしまう。
私は今までの経緯を、診断士さんに説明した。
「最初はブルベ冬と言われまして」
「はい」
「次はイエベ春と言われまして」
「なるほど」
「そして今日、ブルベ夏です」
口に出してみたら意味が分からん。
しかし彼女は、前の2人の診断士さんを否定しなかった。
代わりに、なぜ結果がバラバラになったのかを丁寧に考えてくれた。
どうやら診断する部屋のライトの色や明るさによって、肌の見え方が変わることがあるらしい。
パーソナルカラー、思ったより繊細である。
ただ、3回の診断には共通点もあった。
「明るめの色が似合う」
そこだけは全員一致しているらしい。
つまり私は、とりあえず、明るい色を着ておけば大事故にはならないとの事だ。
念のため、私は最後に聞いた。
「この先、別の人に診断してもらって、秋と言われる可能性はないですかね……」
彼女は間髪を入れずに答えた。
「しらすさんは秋の服を着たら壊滅します」
どれだけ似合わないんだよ、イエベ秋。
私が秋色のニットを着た瞬間、店員さんが走ってきて、
「お客様! それ以上はいけません!」
と止めるのだろうか。
こうして私の四季コンプリートの夢は、秋だけを残して幕を閉じた。
そして今現在、私は自分をブルベ夏だと思って、服やメイクを選んでいる。
一応、診断結果は参考にしている。
しかし、店頭でかわいい服を見つけると、パーソナルカラーのことなど忘れて普通に買ってしまう。
3回受けて3回違った人間としては、すべてを委ねる勇気はない。
結局のところ、パーソナルカラーは人生を楽しむ上でのヒントくらいに考えるのがちょうどいいのかもしれない。
もし次に、「しらすさんは、イエベ秋です」と言われたら。
そのときはもう、似合う色を探すのをやめよう。
そして胸を張ってこう言おう。
「私のパーソナルカラーは日本です」




しらすさん、今回も笑わせていただきました🤣
「明るめの色が似合う」までは普通に参考になる話なのに、
「秋の服を着たら壊滅します」
この断言が強すぎてwww
秋色のニットを手に取った瞬間、
店員さんが走ってくるくだりで完全にやられました🤣
個人的にスタンプラリーが1番のツボwww
四季コンプリート、
秋だけラスボスすぎますね🤡✨
私もブルベ夏の女です!ラベンダーとか調子に乗って着ている50代です笑
秋の服を着たら壊滅、めっちゃわかります!カーキとか着こなせる大人になりたかったです😅