先日、私は「めんどくさい食べ物が嫌いだ」という記事を出した。
(記事はこちらから)
魚の骨を取ったり。
スイカの種を出したり。
私は、食べるまでに手間がかかるものがどうも苦手らしい。
では、いっそのこと。
作る。
食べる。
洗う。
このすべての工程がなくなったら、どうなるのだろうか。
実際、この世にはすでに「食べる」という行為をしなくても栄養を取る方法が存在している。
点滴だ。
もし、その点滴が日常生活で当たり前になったら。
今日はそんな世界を妄想してみようと思う。
ある日、この世から食べ物が消えた。
代わりに現れたのは、点滴である。
そのとき食べたいものの点滴パックを選び、腕につなげば、必要な栄養が直接体内へ入ってくる。
料理をしなくていい。
皿も洗わなくていい。
魚の骨も、スイカの種も、こちらへ面倒な作業を押しつけてこない。
ついに人類は、食事の完全自動化に成功したのだ!
料理が大の苦手で、怠け者の私は歓喜した。
さぁ、今日は何にしようかな?
そう言いながら、私は大量の点滴パックが入ったBOXを物色する。
カレー、オムライス、豚骨ラーメン。
パックには、料理の写真とカラフルなデザイン。
ラベルだけは、めちゃくちゃうまそうである。
「よし、今日は豚骨にしよう!」
早速、豚骨ラーメンのパックを取り出した。
ガラガラガラ…
この時代、1人1台の点滴台を持つのが当たり前になっている。
外出するときも、みんなガラガラと自分の点滴台を引いて歩く。
そうなると当然、個性を出したくなるのが人間というもの。
ステッカーを貼ったり、リボンをつけたり。
自分好みに点滴台をカスタマイズする人も増えた。
ちなみに、親戚のギャルの点滴台はプリクラとラメですごいことになっている。
…話がそれた。
ラーメンをいただこう。
私は豚骨ラーメンのパックを点滴台に吊るし、腕につないだ。
スイッチを押す。
ぽた。
ぽた。
……。
味がしねぇ。
当たり前だ。
舌を通ってないんだから。
豚骨ラーメンという名の白っぽい液体が、無音で体内へ入ってくるだけ。
麺をすする音もない。
スープを飲んだときの、
「うまぁ……」
も、ない。
これのどこが豚骨なんだ。
ただの気分じゃねぇか。
レストランも変わった。
客は白いリクライニングチェアに並んで座り、店員につけてもらった点滴が終わるのを、ただひたすら待つ。
もはや食事というより、待機である。
「「チアーズ!(乾杯!)」」
ガッシャン!!
すると隣の席から、激しい金属音がした。
見ると、デート中のカップルが点滴台同士をぶつけて乾杯している。
乾杯ってそれでいいんだ。
その後、二人は点滴がすべて落ちるまで、テーブルでポケモンバトルをしていた。
この世界ではもう、テーブルは食事をするためのものではない。
点滴が終わるまで、カードゲームをするためのものになった。
店が全部そんな感じだから、食レポも大変。
テレビをつけると、美しい女優が点滴を打ちながら、笑顔でカメラに向かって言っていた。
「このお店のハンバーグ液、とっても深みがありますね!」
どこで感じたんだよ。
血管か?
その血管なのか??
ちょっと小腹がすいたときも困る。
以前ならポテチを一枚つまめばよかった。
しかし、この世界ではそうはいかない。
おやつ用の小型パックを取り出し、点滴台に吊るして、腕につなぐ。
そこから15分ほど放置。
ポテチ1枚に15分。
気軽さは死んだ。
最初は、楽で最高だと思っていた。
私があれだけ嫌っていた「めんどくさい」が、すべて消えた世界。
でも、たぶん一日もすれば気づくだろう。
食事は、栄養を体に入れるだけの作業ではなかった。
焼ける匂いに腹を減らす。
熱いものを、ふうふう冷ます。
揚げたてをサクッとかじる。
口の中をやけどして、ちょっと後悔する。
そして誰かと、
「これ、うまいね」
と笑い合う。
そういう一つひとつが、食事だったのだ。
この世界は、めんどくさい部分だけをきれいに取り除いたつもりが、楽しさまで一緒に取り除いてしまったらしい。
どうやら私は、魚の骨を取る時間さえも愛して…
いや、ないな。
骨は普通にめんどくさい。
そんなことを考えながら、私は点滴台をガラガラと引きずり、人気のない夜の路地裏へ向かった。
噂によると、そこでは今も「本物の食べ物」が違法取引されているらしい。
お目当ては、黒い海苔に包まれた白米だ。
薄暗い路地の奥。
私は周囲に誰もいないことを確認し、店主に小声で告げる。
「例のブツを…1個ください」
店主も声を潜めて聞いてきた。
「…具は?」
「鮭で」
そして私は、少し考えてから付け加えた。
「…あ、小骨は抜いておいてください」
こんな世界になっても、
そこは自分でやらん。



20年以上前、病院にコンビニがなかった時代、小銭がなく、喉が渇いたのに自販機で何も買えなかった状況で、点滴を飲んだことがあります。しょっぱくて、とても飲めたものではなかったです。
全然関係ない話ですが……
これって、食事を我慢する(栄養補給に変える)だけで、、一生ナースさんがそばにいてくれるお話ですっけ??
確かにご飯を食べるのも好き、でも、めちゃくちゃ悩んでしまう、、、
※流石にリスタックで言う勇気はないので、ここでおふざけを笑